ひとつのスタイルに決められないミックスインテリア、パラメータで分析してみた #17

最近のインテリアは、スタイルがミックスされているのが普通。いままでの考え方だけだと特徴を捉えるのが難しい……。どうするのがよいのでしょう?

ひとつのスタイルに分けるのではなく、複数のパラメータから立体的にお部屋を考えてみるという試みです。
早[SAKI] 2023.07.22
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こんにちは、早[SAKI]です。

さて、まずはじめに、お知らせです!

先日、ライフスタイル動画メディアのキオク的サンサクさんに、お部屋をルームツアー動画として取り上げていただきました〜!

動画見たよ〜という声もすでに多数いただいており、動画メディアの強力なリーチ力を感じています。

お部屋の中のものについて、何をどう置いているかをあれこれ語らせてもらいました。ニュースレターやSNSでも部屋にどんなものがあるかは解説してはいますが、動画で自分でしゃべりながら紹介するというのは始めてのことだったので新鮮。自分のしゃべりが不安すぎたのですが、いつも考えているテーマだけあってまあなんとかなってるかな?

あらためてしゃべってみると、あれもこれもDIYでつくっており、素直にそのままで使えない人間なんだなというのがよくわかりました。好きなものがあまり手に入らないからとか、お金を節約したいからとかもあるけど、結局何かつくるのが好きなだけなので、単純に趣味なんですよね。

部屋に夫のもちものなどもあるので、めずらしく夫パートもあります。文章ではあまり登場しないレアキャラなのでこちらも注目してみてください(笑)

実は、当日撮影にいろいろと手間取って時間がかかり、後半日が沈みかけてだいぶ暗くなってしまったのですが、なんとかうまく編集してもらっていました。

動画には入っていない部分だけど、雑談中の私のインテリア関連トークも、夫の音楽やVR関連のトークも、全部漏れなく拾って打ち返すYu_taさんのカルチャー偏差値が高すぎてすごすぎました。これはファンになってしまうね。使っているワイヤレスマイクなどの機材や編集事情についてもあれこれ教えてもらったり、とても楽しい撮影でした。

ということで、まだの方はぜひぜひこのニュースレターを読み終わったあとに(笑)ご覧ください!

近年の日本の部屋、超センスあるしおしゃれ

さて今回、取り上げていただいたこともあり、キオク的サンサクで登場する他のみなさんのルームツアーをあれこれ見ていて思ったのですが。

私、いままで「海外みたいな〜海外のお部屋が〜海外のインテリア〜」ってずっとポジショントークしてきましたけど……

日本のお部屋、めっっっちゃくちゃセンスあるしおしゃれじゃない??

タイトル、変えないといけないかな……。

っていうのはいったん冗談として。しばらくはこのまま行きますよ。

海外みたいに、なんて言わなくていいくらい日本の部屋が素敵なものであふれるようになったら変えるかもね。(あと、「海外インテリア」ってものすごく雑な概念なので、早くそういうインテリアが普通になってこの概念が廃れるといいなとも思っています。)

で、今だってもちろん、日本にあるんですよ、おしゃれな部屋。InstagramとかYouTubeとかTikTokとか見てると、それはそれはいっぱいある! そうだろうということは知っていました。知っていたけど無意識に考慮から外していました。

なぜかというと、私がインテリアをやりはじめた2015年くらいにはここまでSNSでみんなが部屋情報を発信する感じではなくて、こんなに情報がなかったから……なんとなくその時のイメージを引きずっていたところもあるのかもしれない。すみません。最近の時流に乗れてなかったよ。

でも、やっぱりこんなにおしゃれな日本のお部屋をたくさん見れるようになったのって、本当に最近だと思うんです。具体的には、コロナの2020年がかなり大きな転換点だったのではないでしょうか。(ちなみに、キオク的サンサクのYouTubeも2020年1月スタートでした。)

この頃に外出自粛になって、それまではあまりこだわってこなかったけど「部屋の環境って大事じゃん!」となった人たちがお部屋改造を始めていって、それがある程度形になりSNSなどでたくさん出てくるようになったのが今、って感じなのかな〜と思っています。ちゃんと調べたりはしていないのであくまで印象です。

それともうひとつ、これはTikTokを見ていて思ったのですが、今の20代のひとり暮らしのお部屋、すごくおしゃれな方が多いと思う。明らかに、私が20代半ばでひとり暮らしをしはじめた10年くらい前よりかなり洗練されている気がします。

入居する時に床にフロアタイルやクッションフロアを敷いたり、壁にはがせる壁紙貼ったりするような賃貸でもできる内装DIYも、一昔前に比べて完全に一般的になりましたよね。2015年に私がやっていた時は変人扱いされたもんです。

そうやってインテリアを普通に工夫して楽しむ価値観が少しずつ広がっているんだろうな、ということが実感できてきて、嬉しいな〜と思っています。

ひとつのスタイルに分けられない、ミックスがむしろ主流

で、その数年前の感覚で以前インテリアの「スタイル」についての記事を書いていて、それをベースにした原稿を書籍にも載せているのですが。

最近のインテリア環境を見ていると、ちょっとこの内容が古くなってきているんじゃないか? と思い始めました。

もちろん、北欧やミッドセンチュリーといったスタイル自体は古びていないし、そういう概念がまったく役立たなくなることはないのですが、近年のお部屋ってもっと複雑にスタイルがミックスされているし、名前のついていない新しい特徴が多いような気がするんですね。

既存のスタイルの範囲に収まっている部屋なんてもうほとんどない。だから、そういう考え方だけでお部屋を眺めても、あんまり的確に見えてこないのかもしれないなぁ、それだと再現もしづらいよなぁ、なんて思いました。

そこで、今回の記事はインテリアのタイプをバチッとスタイルごとに分けるんじゃなくて、もっと複合的に全体像を捉える方法がないかな? というのを試しに考えてみます。

考えてみているだけなので、これだ! という答えは出ないかもしれません。こういう思考回路をしているんだな、という参考程度にお読みください。

お部屋をパラメータで分析してみよう

最近のお部屋はわかりやすいスタイルでつくられていないから、その発想だけではお部屋の実体が捉えられない。じゃあどうするのか?

ひとつのタイプに分けるのではなく「複数のパラメータのバランス」でお部屋を捉える、というのができるんでは? というのが今のところの仮説です。

何言ってるかわからないですよね。私もまだあんまりうまく説明できないのですが、なんとかがんばる。

まず、スタイルって何からできているかを考えると、お部屋にあるモノの特徴です。部屋の内装も含めた、インテリアの素材や形や色や質感の集合、その特定のモノの集まりがつくり出す印象がスタイルです。

ミッドセンチュリーならミッドセンチュリー期に多用されたプラスチック素材やポップなフォルムやカラーリング、北欧ならウッドの北欧家具やファブリック使いっていうそれぞれの特徴がある。そういった、各スタイルのアイコン的なデザイナーズ家具が置いてあることでスタイルが成り立つこともあります。ここまでが、以前も書いた前提で、これは今も変わりません。

でも、そういった特定のスタイルだけのアイテムで成り立っていない、ミックスの部屋は部分によってスタイルが異なる状態なわけです。

見る場所によって特徴が違っていて、それらの組み合わせの総体が部屋の最終的なイメージを作っている。

椅子を見ればミッドセンチュリーだけど、内装はインダストリアルなテイストがあって、でも北欧雑貨も使われていて、新しくてモダンな印象の家具も合わせていて……となると、それはスタイルとしては結局どれ? ってなってしまいますよね。

もはや、一度バラバラに分解して組み合わせたものを、特定の「スタイル」のようなグループにまとめ上げることが不可能なんです。それを無理やり当てはめようとするとうまくいかなくなる。

それなら、無理にひとつに当てはめようとせずに、そのお部屋について、複数の特徴のパラメータがどういった値になっているのか? という考え方で理解してみよう! という試みです。何か特定のスタイルに分類するのではなく、どの印象が強いか、どういうバランスで仕上がっているかを感覚的に捉えてみます。

ここで考える時のお部屋の特徴のパラメータには、いろんなものが考えられるし、おそらく解像度が上がるほどに細かくなっていくものなのですが、いったん以下のような2種類がものが使えるかなと思っています。

「対になる2つの特徴の、どっち寄りなのか?」という項目がまずひとつめ。

Mat(マット) ↔ Glossy(ツヤ)

Casual(カジュアル) ↔ Luxury(ラグジュアリー)

Monotone(モノトーン) ↔ Colorful(カラフル)

Simple(シンプル) ↔ Decorative(装飾的)

Round(曲線的) ↔ Strait(直線的)

Calm(落ち着いた) ↔ Pop(明るく賑やか)

Rustic(素朴) ↔ Urban(都会的)

Minimal(モノが少ない) ↔ Maximal(モノがたくさん)

英語の方がイメージが的確に表せる気がするので、基本は英語で書きます。左側に寄るほどリラックス感が強まり、右に寄るほどプレッシャー、いわゆる存在感が強まるイメージ。

なお、リラックスとプレッシャーの概念はカジキマグロさんの「様子のおかしいインテリア店」からお借りしました。いろんな記事を書かれているので、そちらも参考にしてね。

また、この特徴を2極であらわす表現は、アンケートなどでよく使われるSD法というものを転用してみたものです。

エスディー法(SD法)とは、商品やサービス、銘柄などの与える感情的なイメージを、「明るい - 暗い」、「人工的な - 自然な」など、対立する形容詞の対を用いて5段階または7段階の尺度で回答させる方法のこと。製品の印象評価の際に利用されることが多い。

そして、もうひとつの項目が、内装やお部屋にあるモノのスタイルに、何がどのくらいのバランスで含まれているか? というもの。ここで考えるスタイルはベーシックでわかりやすいものがいいので、以下の6つを試しに使います。

  • ミッドセンチュリー

  • 北欧

  • インダストリアル

  • トラディショナル  ※以前のnoteや書籍ではクラシカルと表現していますが、こっちの方が海外では正確な表現っぽいのでここでは修正しています

  • モダン

  • ボヘミアン

それぞれのスタイルがどういうものなのか、という解説はいったん今回は置いておきますが、気になる人は過去のnoteを読んでね。

この2つの項目をパラメータとして使って、その部屋がそれぞれのどのへんの特徴に位置するのか? どのくらいのバランスで各スタイルが含まれているか? というのを同時に把握しみると、なるほどこの部屋はこういうタイプの部屋なんだな! というのが立体的に見えてくるのでは、なんて考えています。

はい、ここまで書いてもなんのこっちゃって感じで、大部分の読者置いてきぼりな気がしますが、とりあえずそのままこの考え方で具体例、行ってみましょう。Instagramで見かけた素敵なお部屋を国内外問わず引用させていただいています。

進化系ミッドセンチュリーのミックスインテリア

いろんなタイプのミックスを検討してみたかったのですが、ぜんぶ書いたらやばい長さになってしまいそうだったので、今回はミッドセンチュリーを軸にしたミックスのみを抜粋。他のタイプも今後書いていきます。

いちばんミックスに多用される、ミッドセンチュリー。

ミッドセンチュリーインテリアのど真ん中がまずどういう感じかというと、このアカウントなんかがまさにです。

こういったど真ん中ミッドセンチュリースタイルをさっきの2つの指標であらわすとするとこんな感じでしょうか。

こうやって分解すると、ごりごりのミッドセンチュリーはけっこうプレッシャーの強めなスタイルだということがわかります。存在感めっちゃ強いからね。

そしてこの先で紹介するのは、こういったミッドセンチュリーデザイン家具を中心にしたミックスインテリア。

この路線はまさにこれまでの日本のTHEおしゃれな部屋、の延長線上にある気がします。BRUTUSとかPOPEYEに載るタイプの部屋のイメージ。もちろん海外にもこの雰囲気のお部屋はたくさんあります。私はとても好き。

他のスタイルをミックスすることで、ミッドセンチュリー独特のプレッシャーが弱まって、リラックスな雰囲気に寄せることができるんですね。

進化系ミッドセンチュリー・インダストリアルベース

k__achive さん

まずは日本から、@k__achive さんのお部屋。

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続きは、3592文字あります。
  • 進化系ミッドセンチュリー・北欧ベース
  • 進化系ミッドセンチュリー・トラディショナルベースモダンミックス
  • 解像度をあげ、自分基準のセンスをつくる
  • 今回出てきたアイコン家具

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